第二十二話

2/8
前へ
/242ページ
次へ
 アーネストと共に暮らすようになって知ったことの一つが、彼は毎朝、朝食の前に庭で身体を動かすのが日課であるということ。アーネストのように軍の上の役職についてしまうと、身体を動かすよりも事務的な仕事が多くなるらしい。ひどいときは、一日中、執務室にこもりっぱなしの日もあるとか。だから、自主的に身体を鍛えている。こんな休みの日くらい、ゆっくりすればいいのにとオレリアは思うのだが、毎日の積み重ねらしい。  そういった真面目なところを知って、より好ましく思う。  キッチンにはパンの焼ける香ばしいにおいが漂ってきた。それから豆と鶏肉のスープと野菜サラダを作る。パンが焼けたら、粗熱を取って、ソースにつけたソーセージと野菜を挟む。 「美味そうだな」  いつの間にか、汗を流したアーネストが後ろに立っていた。襟足が少しだけ濡れており、肩にかけたタオルにしずくが滴る。微かな石けんの香りが、表現しがたい色気を放つ。  ドキリと胸が高鳴った。いつもと違うアーネストの姿を目にするたびに、オレリアの心臓はうるさくなる。 「アーネストさま。髪がまだ濡れておりますよ。これでは、風邪をひいてしまいます」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加