第二十二話

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 タオルを奪い取って、濡れている髪をやさしく拭う。 「なるほど。髪を濡らしたままでいれば、オレリアがこうやって世話を焼いてくれるんだな」  鼻先がくっつくくらいに顔を近づけられ、今度は心臓がドキドキと速くなる。 「あ……アーネストさま。ミルコ族は自分のことは自分でするが基本ですよね」  手にしていたタオルをアーネストの頭にぽふっとかけたオレリアに、アーネストは笑いかける。 「自分のことは自分でやるが、家族のことを家族で助けるのもミルコ族だ」  頭をオレリアに寄せて、拭いてくれと言っているかのようにも見えた。 「わたし、ご飯の準備がありますから。アーネストさまも、身体を動かしてお腹が空きましたよね」 「残念。逃げられたな」  アーネストは髪を拭いてから、席についた。オレリアはせっせとテーブルの上に朝食を並べる。 「オレリア、今日はどこを見てみたい?」  アーネストはソーセージを挟んだパンを、手づかみで豪快に食べる。 「どこ、と言われましても、よくわかりません。実は、働いていた食堂と三区の家くらいしか行き来をしていなくて」 「一人で暮らしていたとき、お前の食事はどうしていたんだ?」
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