第二話

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「わたしの覚えが悪いから……」  だからプレール夫人は、鞭でたたくのだ。彼女はいつも「こんな簡単な問題も解けないのですか!」「ミレイア様は、オレリア様と同じ年で、五ヶ国語は話しておりましたよ」「作法がなっておりません」と、オレリアを咎めるような言い方をして、鞭をしならせる。  いつもであれば、それも二、三発で終わり、皮膚に腫れが走る程度であるのに、昨日はプレール侯爵夫人の虫の居所が悪かったのか、皮膚がすり切れるまでたたかれた。 「ミレイアお姉様は、私と同じ年で、五カ国語もお話になられたそうよ?」  背に薬を塗る、メーラの手がほんの少しだけ止まった。だが、すぐに動きは再開される。 「オレリア様はまだ八歳です。できないもののほうが多くて当たり前です」 「ううん。それでは駄目なのですって。わたしは、この国の……だから……」  こんな小屋に押し込められても、身分はかわらない。  プレール侯爵夫人が口うるさく言っている。身分に応じた振る舞いを、と。 「そうです。本来であれば、オレリア様はこのような場所にいるお方ではないのです」  外を見つめるメーラの視線の先にあるのは、朝日によって輝く王城である。
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