第二十二話

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 今日のアーネストは軍のクワイン将軍ではなく、ただの男アーネストとして街を歩いている。もちろんオレリアも、クワイン将軍の妻ではなく、ただのオレリアなのだ。 「あっ……はい。アーネスト……?」  呼び方一つであるのに、心臓が飛び跳ねるくらいに気恥ずかしい。だけど、一気に二人の距離が近づいた感じもした。 「きゃっ」  そのとき、オレリアの隣を元気な子どもたちが勢いよく駆けていった。彼らの目的地も広場のようだ。後ろから、母親と思われる女性が追いかけている。 「大丈夫か? 危ないな」 「大丈夫です。あの子たちの声に驚いただけですから」  子どもたちとぶつかったわけでもない。ぼんやりとアーネストとのことを考えていたから、彼らの元気な声で現実に引き戻されただけ。それをアーネストには知られたくなくて、少しだけ戸惑った。 「そうか。子どもは元気だな」  アーネストの口が「子ども」と言っただけで、オレリアは強く意識してしまう。  いつかはアーネストとの子を望んでもいいのだろうか――
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