第二十三話

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第二十三話

 広場には道化師を見るために、人がちらほらと集まっていた。最前列で膝を抱えて座っているのは幼い子どもたちが多い。その後ろに子どもたちの親と思われる大人たちが立っている。  道化師は噴水を背にして、色とりどりのボールを空に向かって投げている。  一個、二個、三個、四個……と数が増え、次々とボールを投げて掴んで、投げて掴んでと、その動きに合わせて子どもたちの顔が上下する様子も微笑ましい。  オレリアもこういった芸を見るのは初めてだった。だけど子どもたちを押しのけてまで見たいわけではなく、その辺りは節度をわきまえている。 「オレリア。ここのほうがよく見える」  それでも人のいない穴場をめざとく見つけたアーネストが、オレリアの手をひいた。 「あっ」  先ほどまで、人の頭で下半分ほどが見えていなかったが、ここからであれば道化師の全身が見える。後ろにいるアーネストは、そのままオレリアを抱き寄せるかのようにして立っていた。 「すごいですね。あんなにたくさんのボールが」  くるくると宙を舞っているボールと一緒に、オレリアの顔も回ってしまう。
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