第二十三話

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 そのボールをポーン、ポーンと高くあげ、ボール投げの芸は終わった。  パチパチパチと拍手が鳴るなか、チャリンチャリンと小銭が投げられていく。 「アーネストさ……アーネスト。あれは何をしているのですか?」 「どれだ?」  後ろから腰をかがめて、オレリアと目の高さを合わせたアーネストの声は、すぐ側で聞こえた。 「お金を投げています」 「投げ銭と呼ばれるものだ。あの道化師の演技がよかった、よいものを見せてもらったという、感謝の気持ちを渡しているんだ。お金以外にも、食べ物を渡す者もいる」 「だから、わたしたちはここで演技を見る前にお金を払っていないのですね?」 「そうだな。後払いみたいなものか? つまらなかったら払わない。その分、とてもいい演技であれば、それに見合った対価を払う」  アーネストも不意に小銭を取り出し、ポーンと投げた。道化師は、金が飛んできた方向に向かって、ペコペコと頭を下げているが、頭を下げるたびに、ぽん、ぽんと手のひらに花が生まれるから、さらに小銭が投げ込まれる。 「すごいですね。魔法みたいです」 「ほら、次の演目が始まる」
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