第二十三話

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 拍手と投げ銭が落ち着いたところで、道化師はおもむろに剣を取り出した。それは細くて長い剣である。これから剣術でも披露するのだろうか。 「きゃ~」  悲鳴のような歓声があがる。 「え?」  オレリアは驚いて振り向き、アーネストの存在を確かめる。彼の手を探り、力強く握りしめる。  道化師は天を見ながら、その剣をするすると飲み込んでいくのだ。 「あの方、大丈夫なのですか?」  剣を丸飲みして、怪我をしないのだろうか。 「ああ。彼はプロの道化師だからな。こうやって俺たちをヒヤヒヤさせるのが仕事だ」  そう言われても、剣を丸飲みする人間なんて初めて見た。胸がバクバクと締め付ける思いに、オレリアも無意識のうちに身体を強張らせる。最前列の子どもたちですら、シンと静まり返り、剣が飲み込まれていく様子を見守っている。  剣をすべて飲み込んだところで、道化師は空を見上げたまま両手を広げた。噴水がひときわ高く、ぴゅっと水を噴き上げる。 「おぉ~」 「すごぉい」  驚きの声と拍手がまばらに聞こえ始めるが、まだ半分以上の人はあっけにとられている。
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