第二十三話

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 また一つ、アーネストのいいところを知ってしまった。  ふわっとやわらかな風が吹き、オレリアの帽子を持ち上げた。 「あっ」  帽子が浮いたところを、すぐにアーネストが捕らえたが、オレリアの髪は無造作に広がる。慌てて髪を押さえて、アーネストから帽子を預かった。 「この場所は、土地柄のせいかときどき強い風が吹くんだ」  ガイロの街全体が風が強いのではなく、今歩いている大通りだけとのこと。建物の並びもよくないらしいが、その風がさまざまな偶然を運んでくるため、妖精のいたずらとも呼ばれている。  今のように帽子を飛ばされた者と帽子を拾った者、飛ばされないようにとしっかりと手を握りしめる恋人同士、妖精のいたずらの洗礼を浴びた二人は、末永く幸せに暮らすとも言い伝えられている。 「素敵なお話ですね」  アーネストから「妖精のいたずら」の話を聞いたオレリアも、満面の笑みを浮かべた。  大通りにはさまざまな店が並んでいる。どうやら彼は、オレリアの誕生日プレゼントをこの通りの店でそろえていたらしい。そのたびに、今のような格好で街を歩いていた。だから、慣れているのだ。 「ここだ……」
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