第二十三話

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 大通りに通した入り口は、ステンドグラスが眩しく輝いている。扉を押し開けると、カランコロンとベルが鳴った。 「いらっしゃいませ」  黒いドレス姿の店員が、にこやかな笑顔で出迎えてくれた。 「今日は、何をお探しでしょうか」  慣れた口調で、声をかけてくる。 「妻に指輪を」  妻と呼ばれたことで、オレリアはかっと頬が熱くなった。結婚してからというもの、夫婦らしい生活は営んでいない。それでも彼は、オレリアを妻として認めてくれている。  目頭が熱くなり、下を向く。 「おい。どうした?」  困ったようなアーネストの声が上から注がれてきたが、今、顔をあげたら涙がこぼれてしまう。 「かわいらしい奥様ですね」  どうやら店員は、オレリアの気持ちをくみ取ったらしい。 「では、こちらでゆっくり選びましょう」 「はい……」  下を向いたまま、オレリアは返事をした。
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