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このような場所に用がある者などいない。いるとしたら、この白壁を乗り越えて不法入国なり出国する者たち。ここに見張りの兵はいないが、壁の向こう側には見張りを配置している。この裏側は、ちょうど関所の監視所がある場所になっている。それでも壁を乗り越えようとする者は、年に数人はいるのだ。
「オレリア。俺の後ろに隠れていなさい」
白壁を背にし、さらにオレリアをかばうようにしてアーネストは振り向いた。彼女は小さく頷いて、アーネストの背中側にまわる。
ここ最近、誰かにつけられるような感じがしていた。オレリアを狙っている変な男かと思ったときもあったが、どうやらそうではないらしい。
オレリアを狙っていたのは食堂の客だった。
しかしアーネストを尾行していたのは、そんな素人ではない。ある程度、訓練を積んだ者だ。それでもアーネストに気づかれたのだから、たかが知れている。はずなのだが。
「朝から俺たちをつけまわして、いったい、なんの用だ」
腹から響く低い声で、姿を見せない者に向かって問いかける。
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