第二十五話

1/9
前へ
/242ページ
次へ

第二十五話

「そんなちっぽけな剣で、俺たちに向かってくるとはな。俺たちも舐められたものだ」  彼らはきれいな共通語を話している。訛りのない、流ちょうな大陸共通語だ。 「お前たち……トラゴスの者か?」 「御名答」  三人がアーネストに向かってきた。アーネストも数歩前に進み、オレリアから少しだけ距離をとってから構える。  一人目が剣を振り上げた隙に、短剣で相手の脇腹を刺す。 「くっ……」 「動きが大きい」  すかさず二本目の短剣を取り出し、二人目を狙う。相手の剣先が真っ直ぐにアーネストに向かってきた。身体をひょいと横にずらし、今度は相手の大腿に短剣を突き刺す。 「いでぇ!」 「遅い」  アーネストに刺された男たちは、それぞれ脇腹と大腿をおさえてうずくまった。男が手放した長剣を奪い取る。  残るはあと一人。  アーネストの動きに、オレリアも目を奪われていた。  大きな身体をしなやかに動かし、みるみるうちに敵を倒していく。兵の訓練を見たことはあるが、こんなふうに実践を目にしたのは初めてである。地面の上には血だまりが広がっていくが、それが怖いともなんとも思わなかった。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

255人が本棚に入れています
本棚に追加