255人が本棚に入れています
本棚に追加
アーネストに夢中になっていた。人の気配を感じたときには、オレリアはすでに短剣の先を向けられていた。
「クワイン将軍。残念でしたね。もう少しだったのに」
やはり、先に襲ってきた三人は囮だったのだ。
オレリアの顎下に向けて短剣をつきつけているのは、金髪の女性。オレリアはひるむことなく、しっかりとその女性を睨みつける。
「オレリア様を返してもらいます」
「プレール侯爵夫人……」
オレリアの声に、金髪の女性が身体を震わせる。
「私のことを覚えてくださって光栄です。やはり、トラゴス国にはオレリア様しかおりません。トラゴス再建のためには、オレリア様のお力が必要なのです」
彼女がこんなふうにオレリアに声をかけたことがあっただろうか。いや、一回だけあった。父王から呼び出されたとき。
いつもは乱暴に声をかけ、鞭を振り上げていた記憶しかない。
「トラゴス国にはすでに新しい王がおります」
オレリアは落ち着きを払った声でそう言った。
「何をおっしゃっているのです。今の王は偽りの王。トラゴスを本来の姿に戻すためにも、オレリア様の力が必要なのですよ」
猫なで声のプレール侯爵夫人は、虫唾が走る。
最初のコメントを投稿しよう!