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アーネストは鋭くプレール侯爵夫人を睨みつけた。
オレリアは聞きたくないと、首を振る。あまりにも激しいものだから、風にあおられて帽子が飛ばされ、夜明けのような明るい髪が広がった。
瞬間、プレール侯爵夫人に隙が生まれる。
――ビィイイイイイイ!
呼子笛の音が響く。
それは先ほど、アーネストがオレリアに手渡したもの。何かあったら、これを思いっきり吹くようにと伝えたのだ。
「お……オレリア様。何をしているのですか!」
いくらアーネストであっても、女性に剣を向けることはしない。体当たりでプレール侯爵夫人をオレリアから引き離し、オレリアを腕に抱く。
アーネストに飛ばされたプレール侯爵夫人を、側にいた男が支えたが、その彼からはもう敵意を感じられず、死んだ魚のような濁った目をしていた。
呼子笛の音を聞いた兵たちが集まってくる。ある兵は走って、ある兵は白壁を乗り越えて。
「連れていけ」
平服であったとしても、彼らはアーネストをアーネストとわかったようで、その言葉に従い、倒れていた男たちを捕らえる。プレール侯爵夫人も連れていかれた。
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