第二十五話

6/9
前へ
/242ページ
次へ
 身体を大きく震わせてから、アーネストは立ち止まる。 「お前と結婚式を挙げたその日。トラゴス国がハバリーに向かって兵を挙げたという情報が入った」  あの日、ガイロの街へ行かねばならないと告げたアーネストだが、その理由をはっきりとオレリアには伝えていなかった。 「お前を嫁がせておきながら、兵を挙げる。普通であれば考えられないことだ」  だから、普通ではないのだ。トラゴスという国は。  オレリアという、たった八歳の女の子を餌にして、餌に食いついたハバリー国を手に入れようとした。多民族が集まった国の土台が固められる前に、潰そうとしたのだろう。あのときはまだ、建国されて二年だった。 「いつか俺はトラゴスの王を討つことになるだろう。それにお前を巻き込みたくなかった。守れば守ろうとするほど、お前が危険に晒されるし、お前を傷つける。だから守ると言っておきながら、その約束を破り続けた」  オレリアは力強く首を左右に振る。 「違います。わたしはずっと、あなたに守られていた。あなたはわたしを陛下たちに預けることで、そういった情報から守ってくださったのでしょう?」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加