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「……そうか。結局、俺はお前を何からも守ってやれなかったのだな」
アーネストはきつく唇を噛みしめる。
「違います。あなたはずっと、わたしの心を守ってくださった。あなたのその存在が、わたしを強くしてくれたのです」
オレリアは一歩踏み出して、アーネストに抱きついた。
「アーネストさま。わたしは何度でも言います。絶対に離縁はいたしません。これからも、アーネストさまの妻でいていいですか?」
オレリアは力強く彼を見上げる。密着した身体からは、彼の体温と鼓動を感じた。
「だが、俺は……お前の父親を殺し、兄を殺した男だ……」
「それがなんだと言うのです? わたしを殺そうとした男を、アーネストさまが討ってくださったのでしょう? 妻であるわたしを、あの者たちから守ってくださったのでしょう?」
ひゃっと声をあげたときには、アーネストに力強く抱きしめられていた。大きな手は、オレリアの頬をやさしくなでる。
「俺の知らぬ間に、大人になったものだ。俺は、お前にずっと言えなかった。トラゴスの実情を……」
「それだって、アーネストさまがわたしを思ってくださってのこと」
「……すまなかった」
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