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だからミレイアの機嫌はよくなく、周囲に当たり散らす。それはマッシマ公爵令嬢も同じで、それらの被害に合うのは彼女たちよりも下の身分のもの。
どうやらプレール侯爵夫人もその一人のようだった。そうなれば、プレール侯爵夫人にも鬱憤はたまり、そのはけ口がオレリアとなる。
最近、彼女の鞭捌きが激しいのはそれが理由であった。
――トントントン
珍しく扉が叩かれた。
オレリアがこの部屋にいるときに、誰かが訪れたことなど今まで一度もない。プレール侯爵夫人は忌々しく顔をゆがませてから、扉を開けた。
オレリアは扉に背を向けて書き取りをしているため、誰がやってきたのかはわからない。ただ、ぼそぼそとした話し声が聞こえてくる。
「オレリア様」
プレール侯爵夫人が、オレリアをこのように呼ぶのは珍しい。まさしく晴天の霹靂ともいえるような状況である。
「陛下がお呼びとのことです。お待たせしないように、準備をなさってください」
準備も何もない。
「いいですね? 陛下にお会いになられたら、わたくしが教えた通りご挨拶をなさるのですよ?」
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