第三話

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 メーラの言いたいことはよくわかる。八歳の娘が他国に嫁ぐのは、人質のようなものだ。いや、今回の場合は間違いなく人質である。このふざけた結婚を言い出したのがどちらからかはわからない。しかしオレリアがハバリー国に嫁ぐことで、トラゴス国はハバリー国の協力を得やすくなる。  トラゴス国内では、いたるところで小競り合いが起こっていた。それを鎮圧するために各地に兵士が投入され、今では戦力も落ちつつあるのは、オレリアもなんとなく知っている。  このまま戦力を落とせば、トラゴス国をよく思っていなかった諸国が、一気に戦争をしかけてくるかもしれない。  だからトラゴス国は、ハバリー国からの援助を狙っている。特にその中でも目をつけているのが、ハバリー国の一部の戦闘部族だろう。彼らの力を借りて、国内を制圧したいにちがいない。 「オレリア様。私もついていきますからね」  メーラの腕の中にとじこめられたオレリアは「え?」と顔をあげた。 「嫁ぎ先に侍女がついていくのも珍しくはないでしょう?」  メーラの言うとおりである。嫁ぎ先に使用人を連れていく。それはいたって当たり前のこと、なのだが。
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