第三話

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 そのまま豪奢な馬車に乗せられた。粗末な扱いをされるのかと思ったが、そうではないようだ。嫁入り道具を乗せた馬車も準備され、一国の王女の輿入れとして恥じるものでもなかった。  トラゴス国の王城からハバリー国の首都サランまでは、馬車で十日ほどかかる。  容易にトラゴス国に戻ってくることはできない。もしかしたら、二度と戻らないかもしれない。だからといって、戻りたいわけでもない。 「オレリア様、お疲れですか?」  向かい側に座っているメーラが、静かに声をかけてきた。  外を見ても、緑しか見えないような場所に入った。今日の明るいうちにこの森を抜け、中継点の侯爵領に入りたいところ。 「大丈夫よ」  オレリアがそう口にするたびに、メーラは困ったように目尻を下げる。 「長い旅になりますから。あまり緊張なさりませんよう」  そう言っているメーラからも、緊張が伝わってきた。 「メーラ、そっちにいってもいい?」 「はい」  オレリアは場所を移動した。メーラの隣に座って、彼女の手を握る。 「メーラ。わたし、疲れちゃった。少し、眠ってもいい?」 「はい。私はここにおりますから。どうぞ、ゆっくりとお休みください」
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