246人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
第四話
トラゴス国を出るときは、華やかなドレスを着た。しかし、それは見送る者への演出であって、移動中は動きやすく簡素なドレスを着る。
そして国を出てから十日目の朝。出立時と同じドレスを身につけた。
ハバリー国へと入ったのは五日ほど前。関所を抜けて、ハバリー国の国境の街、ガイロの街に入った。すでに連絡はあったようで、ここで手厚く歓迎され、馬車もトラゴス国のものからハバリー国のものへと乗り換えた。
「閣下は、首都でお待ちです」
そう言われたのは、ガイロの街を訪れたとき。
閣下――それはオレリアの夫となるクワイン将軍を指す。
クワイン将軍はミルコ族と呼ばれる部族の男であり、ミルコ族は現首都部サランを拠点として生活をしていた。そのため、彼はサランにいるのだろうと、オレリアでも予想ができた。
ただ、そう告げた彼の視線が、メーラを捕らえていたのが気になった。
首都サランに入り、王城が近づくにつれ、オレリアの心臓も馬車と同じようにゴトゴトと音を立て始める。
「メーラ。どうしましょう。ものすごく、緊張してきたわ……」
最初のコメントを投稿しよう!