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口から心臓が飛び出てしまうのではと思えるほど、先ほどから心臓がうるさく動いている。
「そうですね。見知らぬ場所ですから。ですが、今までを思い出してください。ハバリー国の方は、優しい方のようですね。私も、たいへんよくしてもらいましたから」
メーラの言うとおりである。休憩として予定されていた屋敷や宿に足を運ぶと、オレリアだけでなくメーラも親切なもてなしを受けたのだ。
「ハバリー国は、さまざまな部族と文化の国とは聞いておりましたが。本質はどこの部族も同じなのでしょうね」
だから、クワイン将軍も優しいはずと、メーラは言いたげだった。
馬車が大きく揺れて止まった。それと同時に、オレリアの心臓も止まるのかと思うくらい、驚いた。
「安心してください、オレリア様。私がお側についておりますから」
馬車の扉が外側から開けられ、そこから差し込む日の光で思わず目を細くする。
「手を……」
目が慣れたころ、軍服姿の一人の大柄な男性が、手を差し出した。その手をとって外に出ろという意味だろう。
だけど、オレリアは違和感を覚えた。これは、ハバリー国に入ってから、ずっと感じていたものでもある。
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