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男の手は、メーラに向けられていた。
メーラは困った様子で、ちらちらとオレリアに視線を向ける。
「オレリア王女殿下……?」
いつまでも手を取らないメーラに、男も怪訝に思ったのだろう。
オレリアは、大きく息を吸った。
「オレリアは、わたしです……。その女性は、わたし付きの侍女のメーラです」
男はそのままの姿勢を保ちながら、顔だけオレリアに向けてきた。
鉄紺の瞳と目が合った。彼は、じっとオレリアを見つめている。オレリアも負けじと彼を見つめ返した。
ふと、彼の目尻がゆるむ。
「失礼した。オレリア王女殿下。手を」
オレリアは差し出された男の手に、自身の手を重ねた。オレリアの倍もあるような大きな手は、皮も固くごつごつとしていたが、触れたところから伝わるぬくもりが心地よい。
「わぁっ……!」
思わず感嘆の声が漏れ出たところで、口を閉ざす。はしたない真似をしてしまった。
「ようこそ、ハバリー国へ。ここがラフォン城だ。これから、あなたが住まう場所となる」
挨拶をしていないことを思い出し、オレリアは手を離してスカートの裾を持ち上げる。
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