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「お目にかかれて光栄です。トラゴス国第二王女オレリアと申します。このたびは、この縁談を受けてくださり、ありがとうございます」
義母から教え込まれた文言である。
「はじめまして。俺がアーネスト・クワインだ。先ほどは、間違えてしまい申し訳なかった。王女殿下は、十八歳と聞いていたのでな」
だから、このような子どもだとは思わなかった。そう、聞こえたような気がした。
「気分を害されたのなら、申し訳ない。そういう意味ではない」
では、どういう意味か問いたかったが、それを聞いてどうしたいのか、オレリア自身がわからなかった。
「長旅で疲れただろう。部屋に案内しよう」
「お気遣い、痛み入ります」
その言葉に、アーネストは眉間にしわを作った。
言い方を間違えてしまったのだろうかと、オレリアは焦ったが、彼は怒っているわけではなさそうだ。
オレリアの手を取りながら、ゆっくりと歩いてくれる。
ラフォン城は、石造りの年代を感じさせる城であった。緑色の蔦が城を守るかのようにして絡みつき、青い尖塔は空に向かって真っ直ぐ伸びていた。天気の良い日はその青が空に溶け込んでしまうだろう。
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