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そこで、扉が叩かれた。返事をすれば、嫁入りの荷物が次から次へとやってくる。それでも、一国の王女の嫁入りのわりには荷物は少ないかもしれない。普段着る用のドレスが数着とナイトドレス、そして純白のウェディングドレス。
あの父王のことだから、ウェディングドレスの準備さえ渋るかと思ったが、こうして与えてくれたことには感謝しかない。
『ふん。古くさいこのドレスでも持っていくがいい』
だけどメーラは気がついたようだ。父王がオレリアに渡したドレスは、オレリアの母親が着たもの。
もちろん、今のオレリアにサイズが合うわけがない。メーラがせっせと直してくれたから、なんとか着られるようになった。
そしてオレリアの結婚式には、トラゴス国側の人間は誰も出席しない。
この結婚が何を意味するのか、そこにいる者は悟るだろう。
「オレリア様、お顔にしわができておりますよ?」
荷物の片づけを終えたメーラが、いつの間にか戻ってきていた。そして、オレリアにお茶を淹れる。
「この茶葉もこの茶葉も……一級品ばかりですよ……。思っていたよりも、ハバリー国はすごいのかもしれませんね」
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