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「いや、いい。ここはトラゴス国ではなくハバリー国だ。知っての通り、ハバリー国は多部族が集まってできた国。そちらの国のような複雑な人間関係を気にする必要はない。メーラ殿も思うことがあるならば、遠慮せず俺に言うがいい。もちろん、オレリア王女殿下もだ」
「……でしたら、オレリアと。そう呼んでくださいませんか? まだ正式に結婚する前ですが、王女殿下と呼ばれるのは好きではありません」
オレリアがはっきりとした口調で言うと、「承知した」とアーネストが明るく答える。
「だったら、俺のこともアーネストと呼べ。俺も閣下と呼ばれるのは好きではない」
アーネストは、オレリアの手をぐっと握りしめた。
「では、食堂に案内する」
「オレリア様をよろしくお願いします」
「ああ。メーラ殿には、部屋に食事を運ばせる」
オレリアはアーネストに手を引かれて、食堂へと向かう。すれ違う者たちが、興味深そうにオレリアに視線を向けてくる。だけどアーネストが、その視線からオレリアを隠すかのようにしながら隣に立つ。
「オレリアはこの結婚をどう思っている?」
「どう、と言うのは?」
「知っての通り、俺はオレリアよりも二十歳も年上だ」
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