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「はい」
「オレリアが望むならば、この結婚をなかったことにしてもいい」
ズキリと胸が痛んだ。やはり、オレリアではアーネストの相手として相応しくないのだ。
「それがアーネストさまの……いえ、このハバリー国の望みですか?」
「……いや。俺たちはこの結婚を断れない。断ればどうなるか、わかっているからな。だが花嫁として差し出されたのが、オレリアのように幼い娘であれば、話は別だ」
彼は苦しそうに言った。歩調が少しだけ遅くなる。
「わたしでは、アーネストさまの花嫁に相応しくないと?」
「……ちがう」
彼がオレリアのことを慮っているのはひしひしと感じ取れた。だけど、この結婚が駄目になったところで、オレリアに戻る場所などない。まして、行く場所もない。
「わたしは、トラゴスの王女としてハバリー国に嫁ぐのです。その意味を、アーネストさまもおわかりかと」
「……すまなかった。今のお前に聞く話ではなかったな。だが、きっと今から同じことを問われる」
「はい……覚悟はできております。きっと陛下も、ミレイアお姉様がここに来られると思っていたのでしょうね」
オレリアは自嘲気味に笑う。
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