第五話

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 アーネストがどうしたらものかと、まごついている様子が伝わってきたが、それを無視して食堂を出ていく。これ以上、彼に迷惑はかけられない。  ただでさえ、オレリアが花嫁としてここにいる事実が迷惑になっているのだ。  食堂の扉をしめ、回廊に出たところで大きく息を吐き、目頭が熱くなったところで顔をあげる。  背筋を伸ばして歩いて、離れの部屋へと向かうが、こそこそと何かささやくような声がオレリアの耳に届く。  食堂へ向かうときには気にならなかったのに、今になって異様にそれが気になった。 (あぁ……アーネストさまが……)  先ほどは、彼がオレリアを興味の視線から隠してくれていた。  それに気づいたとき、オレリアの心の中でアーネストの存在が大きくなった。  部屋に戻ると、驚いた様子でメーラが出迎えた。 「これほど早くお戻りになるとは思ってもおりませんでした」 「やはり、わたしでは駄目なのよ。おかしいでしょう? アーネストさまと結婚だなんて」   気丈に振る舞っていたが、メーラの顔を見た途端、一気に涙がこぼれてきた。
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