プロローグ

5/7

247人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
 アーネストの手紙には、いったいどのような内容が書かれているのだろうか。  彼とは十二年前に別れたきり。オレリアは、ずっと彼を待ち続けていた。  結婚したから――  それだけが理由ではない。  確かにあのとき、彼を好いていた。それが、憧れなのか、尊敬なのか、愛情なのか。なんと呼ぶのが正しい感情であるかはわからない。ただアーネストと家族になれた喜びを、誰よりも強く噛みしめていたのだ。  だから彼がガイロの街へ行くと言ったときも、彼から与えられた言葉を信じて待てると思った。  ――次にアーネストさまとお会いする日には、立派な淑女として振る舞えるよう、努力いたします。  そう言って見送ろうとしたとき、アーネストの大きな手はゆっくりとオレリアの頭をなでた。  ――楽しみにしている。  彼の言葉を胸に刻み、ダスティンとマルガレットの側で、この国にとって必要なことを学んだ。  覚えることが多くて、根をあげそうになったときもあった。そんなときはアーネストに会える日を思い描き、けして弱音は口にしなかった。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加