第六話

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 回廊にはランプが等間隔で灯されており、歩く分には問題ない。それでも暗いこの空間を、彼女が一人で戻ったことを考えると、胸がズキリと痛んだ。きっと、周囲からは好奇の目を向けられたにちがいない。彼女が他の国からやってきたというのは、その髪色だけですぐにわかる。  好奇の目からオレリアを守れなかったことを、悔やむ。  離れの部屋の扉の前で、柄にもなく緊張して立っていた。ひんやりとした叩き鐘を手にしたまではよかったが、それを動かせずにいる。  一夫多妻を認めていないハバリー国であるが、結婚できる年齢には決まりがない。十歳にも満たない子が、他家に嫁ぐというのは、働き手の確保や食いぶちを減らすといった意味で、昔から使われてきた手法でもある。  アーネストとオレリアには二十歳の年の差があるが、ハバリー国が建国される前の各部族間では、十代の娘が族長の後妻になるという話も聞こえてきたものだ。  それでも一夫一妻を貫く部族の教えは、誇らしいものだと思っている。  コツ、コツとゆっくりと叩き鐘を鳴らすと、扉が開いた。 「閣下。このような時間にどうされましたか?」
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