第六話

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 姿を現したのはメーラである。オレリアが連れてきた唯一の人物。トラゴス国のことだから、使用人をぞろぞろと連れてくるだろうと思っていたから、それがたったの一人というのも意外だった。 「オレリアの様子を見に来たのだが、迷惑だったろうか?」 「いえ、めっそうもございません。ですが、閣下は他の部屋でおやすみになられると聞いておりましたので……失礼しました」  部屋に入ると、薄暗かった。ただ、奥の部屋の一角だけが明るく、そこにオレリアがいるのだろうと予想がついた。 「……オレリア」 「アーネストさま?」  すでに着替えていたオレリアは、薄紅色のゆったりとしたドレスを着ていた。先ほどは結い上げられていた髪もほどかれ、三つ編みにして前に垂らしている。 「どうされたのですか?」 「夫が妻に会いにくるのに、理由がなければいけないのか?」  メーラがすっと姿を消した気配を感じ取った。彼女はよくできた侍女のようだ。 「……ですが、わたしたちはまだ結婚をしておりません」 「結婚を前提に、お前はここへ来たのだろう?」  オレリアの隣に、腰をおろす。
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