第六話

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 離れの部屋といっても、二人で生活するには十分な広さがある。居間、寝室、衣装部屋、そして浴室。使用人のための控えの間を準備したのは、オレリアがトラゴス国の人間だからだ。少なくとも、アーネストにとっては不要な部屋である。 「はい。このような立派なお部屋を用意していただいて、感謝しかありません。アーネストさまは、他にも邸宅を持っていらっしゃるのですか?」 「いや。俺もここで暮らしている。ここが俺の家のようなものだ」 「ですから先ほど、本館で寝泊まりされているとおっしゃったのですね」 「ああ。ミルコ族は、たいていが首都サランに家をかまえている。俺は族長に育てられたようなものだからな。物心ついたときから、ここにいた」  ラフォン城は、昔からミルコ族の族長が守っていた城なのだ。 「ミルコ族、ハバリー国については、まだ知らないことがたくさんあります。これから、教えてください」 「ああ、時間はたっぷりとあるからな。ゆっくりと覚えていくといい。さて、浴室の準備をしよう」 「そのようなこと、アーネストさまがなさらなくても……」
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