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彼の手紙にも『大変です』『辛いです』と書いたことはない。会える日を楽しみにしている、どのようなことを学んだかなどを書き連ねていたが、残念ながらこの十二年間、返事は一度もきていない。
それなのに、初めて彼からの言葉が届いたのである。
逸る気持ちを無理矢理おさえて、口から飛び出しそうなほど暴れている心臓もできるだけ落ち着けようと試みる。
「オレリアを見ていたら、私のほうが緊張してきたわ」
マルガレットは、口元に手をあて上品に微笑む。
ペーパーナイフを差し込むものの、手がふるえてうまく封蝋を開けられない。
「もう、じれったいわねぇ」
マルガレットもそわそわとし始め、封を開けようとするオレリアの手の動きを見守っている。
やっと封蝋が砕け、封筒から用紙を取り出すと二枚入っていた。
先ほどからドクドクと心臓がうるさくて、手足の先は少しだけしびれるような感覚すらある。
丁寧に手紙を開き、連なる文字を追っていく。
「……え?」
オレリアは、手紙に書かれている内容を信じられなかった。
唇が震え、マルガレットに助けを求めたいのに、言葉は出てこない。
「何が書いてあったの?」
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