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メーラがサイズを合わせてくれた純白のウェディングドレスは、スカート部分のレースが細やかな花柄になっている。胸元にも絹糸で花柄の刺繍が施され、光の当たり方で輝きがかわる。ドレスのいたるところに花の模様が描かれているのは、シーニー国が花の国と呼ばれているためで、母国を忘れないようにという意味が込められているからだ。
それを教えてくれたのはもちろんメーラである。
「これは、母が結婚式で着たドレスです。母はシーニー国からトラゴス国に嫁ぎました。トラゴス国の……側妃として嫁いできたのです」
「だが、この国は一夫多妻を認めていない。俺の妻はお前だけだ。それを覚えておけ」
乱暴にそう言ったアーネストは、オレリアの手を取った。
食堂に入ると、結婚式の間にも感じた視線がオレリアにまとわりついた。だけど、アーネストが手をつないでくれたことで、その視線に強く立ち向かえる。
この結婚を疎ましく思っている者がいる。それは覆すことのできない事実。事実であれば、それと堂々と向き合えばいい。
教えてくれたのは、もちろんアーネストである。
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