第七話

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 答えたのはアーネストではなかった。 「悪いが、私はまだまだマルガレットと二人だけの生活を楽しみたいのでな。期待に答えられず申し訳ない。あと、五年くらいは待っていてほしい」  ははっと笑ったダスティンは、隣のマルガレットの耳元で何かをささやく。すると彼女は、ひしっと身体を硬くして顔を真っ赤に染め上げた。 「私が知る限りでは、ゴラン族の族長が十三歳の女性を後妻として娶ったという話もあったはずだが?」  ダスティンは、先ほど「世継ぎの問題」と口にした男を厳しく見つめる。 「確かそのときの族長は、四十過ぎていたのでは? あぁ、それはお前の祖母の話か」  ダスティンがくつくつと笑えば、マルガレットが静かに叱責する。 「失礼した。祝いの場で話すことではなかったな。私もアーネストがやっと結婚をしてくれたから、少し浮かれすぎたようだ」  グラスに注がれた葡萄酒を、ダスティンは口に含む。  そんなやりとりを、オレリアは身体を小さくしながら眺めていた。  少なくともダスティンはオレリアの味方である。いや、アーネストの味方なのだ。そして他の部族は、この結婚を認めたくないようだ。
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