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そう言われていただけで、王女のような暮らしができたわけではない。まして、オレリアがその暮らしを望んでいたわけでもない。
「アーネストさま。何かありましたか?」
「何か、とは?」
「いえ、先ほどの兵が……」
何をアーネストに告げたのかを気になっていた。
「聡い子だな……おそらく、俺は明日。ガイロの街に発つことになる」
「ガイロですか?」
国境の街、ガイロ。オレリアも通ってきた街である。
「ガイロはスワン族が中心となっている街だが、国境ということもあってなかなか複雑な場所なんだ」
オレリアにもわかるように、言葉を選んで話しているのだろう。
「そこで、ちょっとした問題が起こった。俺が行く必要があると判断した」
「では、わたしも?」
結婚したのであれば、彼についていくべきだろう。しかし、明日、出立とは準備に時間がかけられない。オレリアが荷物の整理をしようと慌てて立ち上がろうとしたところを、アーネストの手が止めた。
「オレリア。悪いがお前をつれていくことはできない。今も言ったように、ガイロは難しい場所だ。お前を連れていくと、お前を危険に巻き込んでしまう」
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