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『オレリア。ミルコ族では、特別な日に愛する人のために手料理を振る舞うのです』
それを教えてくれたのはシャトランであった。
ラフォン城ではたくさんの人が働いているため、料理を用意する料理人がいる。
だけど、その人にとって特別な日には、特別な相手から手料理を振る舞われるとのこと。
だからマルガレットの誕生日にはダスティンが料理を作って、ダスティンの誕生日にはマルガレットが手料理を振る舞う。
『オレリアも、アーネストのために料理を覚えましょうね』
料理なんて、芋をふかすくらいしかやったことがない。芋を育てるのは得意だが、芋を使った料理などわからない。
オレリアが学ぶなかで、一番たいへんだったのがこの料理である。野菜の皮をむいて、切って、焼いて。たったそれだけなのに、できあがった料理の不味いこと。食べられたものではない。だけど食材がもったいないからと、無理して食べようとしたら、料理人がささっと他の料理へと作りかえた。
料理を覚えるのがたいへんです、とアーネストの手紙に書こうとしたが、それはやめた。料理をシャトランから習っていることを、なんとなく内緒にしておきたかったのだ。
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