第八話

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 アーネストが戻ってきたときに、美味しい手料理を振る舞って驚かせたいと、そんな思惑もあったのかもしれない。  シャトランから料理を教えてもらうかわりに、オレリアは挨拶などの作法をシャトランやマルガレットに教えることになった。  きっかけはマルガレットの一言だろう。 『オレリアのナイフの使い方はきれいね。私は苦手で……。近くにイグラ国の使者がやってくるから晩餐会があるのだけれど。それに、言葉も……たまに、何を言っているのかがわからなくて……憂鬱だわ……』  ダスティンが冗談めいて「だったら、オレリアに教えてもらえばいいだろう」と言ったような気がする。  そこから、オレリアが挨拶の仕方やダンス、作法や外国語などを教えるようになったし、たまに通訳として外交の場にダスティンやマルガレットの近くに立つこともある。プレール侯爵夫人から厳しく教え込まれた内容が、今になって役に立ったのだ。厳しかったプレール侯爵夫人だが、このときばかりは感謝した。  マルガレットたちの教師役になったこと、外交の場で通訳を務めていることを、アーネストへ手紙で伝えた。やはり、彼からの返事はこなかった。
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