第九話

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第九話

 オレリアが呆然と長椅子に座っていると、ぷんすこと怒っているマルガレットが戻ってきた。 「オレリア。今、あの人の部屋でみんなが集まっているの。歩ける?」 「は、はい……」  まだ、頭の中がふわふわとしていた。先ほどの手紙の一文を忘れられない。  ――離縁してください。  どうして? なぜ?  その気持ちがオレリアの心をがんじがらめに捕らえている。  胸の奥が痛くて、ドクドクと手足の先まで血流が跳ねた。 「……リア、オレリア、オレリア!」  マルガレットから名を呼ばれて、顔をあげた。 「オレリア、大丈夫か?」  穏やかな男性の声は、ダスティンのものだ。  いつの間にか、ダスティンの執務室へとやってきたらしい。葡萄酒色の絨毯が印象に残る部屋だから、間違いない。 「はい……っ……」  口を開けた瞬間、目頭が熱くなり、涙が勝手に溢れてきた。 「まあ、まあ、オレリア……」  そう言って背中をさすり始めたのはシャトランである。オレリアは、マルガレットとシャトランの間に座っていたが、いつ座ったのかという記憶もない。
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