第九話

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「ガイロの街は、以前よりはだいぶよくなっている。一時期、スワン族はトラゴス大国に寝返るのではないかと言われていた。だけど、やっとここにきて、その心配はなくなった」  懐かしい母国の名を聞いて、オレリアは顔色をさっと青くした。  ガイロの街、スワン族、トラゴス大国。そしてオレリア。 「どうして、その心配がなくなったのですか?」  だけどオレリアはその理由を知っている。ダスティンやデンスは必死になって隠したがっていたようだが、なんとなく人伝に聞こえてくるのだ。それに、いつも通訳としてオレリアを連れ出していた外交や社交の場から、遠ざけようとし始めたのも知っている。名目は、王子や王女たちの家庭教師となったから、だったような気がするが、おそらくオレリアの耳に他からの情報を入れたくなかったのだ。 「トラゴス大国の頭が……替わったからな……」  つまり、国王が替わった。  なんとなくそんな気はしていたが、オレリアには正式な知らせはなかった。ハバリー国に嫁いだ娘には興味がないのか、それとももう、オレリアという存在は忘れ去られたのか。 「……まあ、この話はおいておいてだ」
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