第十話

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 なんとかオレリアの誕生パーティーに間に合ったようで、見張りの兵に軽く挨拶をしてすぐに会場の大広間へ足を運ぼうとしたが、他の者に見つかるのを避けて、庭園側からまわることにした。庭園からバルコニーへと続く階段をあがり、そこからこっそりと大広間を見渡す。  パーティーはすでに始まっており、外まで楽団の奏でる音楽が聞こえてきた。  広間の中央では深紅のドレスの裾を翻しながら、楽しそうに踊っている女性の姿に思わず目を奪われる。  オレリアだった。夜明けのような明るい髪の女性は彼女しかいない。  曙色の髪はすっきりと結い上げられ、一段と大人びた表情を見せる。身体のラインを強調したドレスであるものの、スカート部分にはバラの花をあしらった飾りがいくつも縫い付けられていた。  そういえば、彼女の母親が花の国とも呼ばれるシーニー国の生まれであったことを思い出す。  出会ったときのような無垢な笑顔とは言えないが、相手を見つめるオレリアは、小ぶりの花がたくさん咲いたように、かわいらしく微笑んでいた。
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