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その男は、アーネストも知らない男。年はアーネストよりもだいぶ若いだろう。
保護したひな鳥が飛び立つ瞬間に立ち会った気分である。そして飛び立った先に、彼女に似合うような、彼女と同じ年頃の男性がいるにちがいない。
アーネストはそっとその場を立ち去る。
『もう、お帰りになられるのですか?』
見張りの兵に見つかった。ある意味、彼はきっちりと仕事をこなしていると言えるだろう。
『今日はこちらでお休みになられないのですか? オレリア様にはお会いになりましたか?』
『今日、俺がここに来たことは誰にも言うな』
『閣下?』
『いいな。絶対に、誰にも言うなよ』
脅すように見張りの兵を睨みつけて、アーネストは賑やかなラフォン城を後にした。
早馬を酷使しすぎたせいか、アーネストがガイロに戻ってきたときは、馬がヘロヘロになっていた。
『どんな無茶な走り方をしたんですか! それに、こんなに早く帰ってきて。奥様と喧嘩をなされたのですか?』
副官であるジョアンがまくし立ててきた。彼は頭が切れるだけでなく、小姑のようにうるさい。
『うるさい。俺は疲れたから、もう、寝る』
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