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古城といえば古くさいイメージがあるが、建物自体に年季はあるものの内装は手入れが行き届いている。むしろ、先人の知恵による快適な空間でもあるのだ。
ダスティンは二十四歳という若さでハバリー国の国王に就いた。ミルコ族に多く見られる黒髪を、垂れ下がった犬の尻尾のように一つにまとめている。
ミルコ族の族長はダスティンの父親であったが、ハバリー国建国時に族長の座から降りて、ダスティンにその地位を譲った。今となっては、ダスティンの父親も立派な隠居爺である。
「唐突だな」
ダスティンとテーブルを挟んだ向かい側に座っているのが、アーネストである。年はダスティンよりも二つ上。青鈍の髪は短く刈り上げられ、額も耳も首元もしっかりと日に焼けているのが見てわかる。
族長にかわいがられたアーネストは闘神とも呼ばれ、ハバリー国の建国に一役買った。だから今では、ダスティンの右腕として非常に頼りにされているのだ。
「トラゴスからの手紙だ」
まるで開けたら爆発でもするかのように、ダスティンは親書を疑っている。
「とりあえず、開けてみたらどうだ? 封蝋は本物なのだろう?」
アーネストは鉄紺の眼を細くして尋ねた。
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