第十話

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 いや、アーネストがオレリアを大事にしていると周囲に思われてはならない。そうすれば、彼女が狙われるからだ。家族や恋人を狙うのは、彼らの常套手段でもある。  だから彼女を守るために突き放すしかない。けれども返事だけは書いてみた。出せない手紙を彼女に宛てて書く。  そうこうしているうちに、彼女から二通目の手紙が届いた。そして、三通、四通と、アーネストが返事を出さなくても届く。  いつしかそれが当たり前となり、彼女からの手紙がアーネストの楽しみにもなった。  しかし絶対に返事は出さない。書くけど、出さない。  アーネストがオレリアを大事にしている想いを、周囲に悟られてはならないからだ。  その想いが家族愛だとしたら、なおのこと。その気持ちを周囲に悟られたとき、オレリアはアーネストの弱点になり、オレリアが危険に晒される。  その代わり、ダスティンに送る報告書には、オレリアの近況を尋ねる文言をいれた。  すると彼は、面白おかしくオレリアのことを教えてくれるのだ。
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