第十一話

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 子どものようにはしゃぐジョアンを見て、彼女がジョアンの想い人なのだろうと察した。 「あ、ジョアンさん。こんにちは」 「こんにちは、リリーさん。僕はおすすめランチ。閣下はどうされます?」 「俺は、なんでもいい」 「うわ、出た。めんどくさい男の典型。なんでもいい。てことで、おすすめランチを二つで」 「はい、おすすめランチ。二つですね。少々お待ちください」  注文を聞き終えた給仕は、カウンターのほうに戻っていく。 「閣下。見ました? 今の子です。かわいいですよね。あの子、ミルコ族だと思うんです」  ミルコ族は黒い髪が特徴であり、ジョアンも同じようにミルコ族である。  そして彼女は、黒い髪を一本の三つ編みにして後ろに垂らしていた。だからジョアンが言ったようにミルコ族なのだろう。  地味な格好をしているものに、かわいいと思うから不思議だった。  いや、それよりも――  アーネストは既視感を覚えた。彼女とはどこかで会ったことがあるような、そんな気がする。 「閣下、閣下……どうしました?」  ジョアンがアーネストの顔の前で、ひらひらと手を振る。 「なんだ?」
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