プロローグ

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プロローグ

 大きな窓から差し込む陽光が、薔薇色の絨毯を明るく照らす。窓が少しだけ開けられており、室内に流れ込んでくる風が心地よい。  パサリパサリと紙をさばく音が響くなか、「あ」と声をあげたのは、マルガレットである。彼女がこのような声をあげるのは、珍しい。 「マルガレットさま、どうかされましたか?」  オレリアも自然とそう尋ねていた。 「この手紙は、オレリア宛てよ? しかも兄さんから」 「えっ?」  マルガレットの兄アーネストは、オレリアの夫でもある。だからマルガレットはオレリアの義妹になるのだが、年は彼女のほうが一回りも上であった。  そのアーネストは、オレリアたちが暮らしている首都サランから、馬車で五日ほどの距離にある国境の街ガイロにいる。  二人の結婚式を挙げた次の日、彼はオレリアを首都において、ガイロの町へと向かった。 「アーネストさまから?」  オレリアは信じられないとでも言うかのように、首を左右に振る。  結婚後、離れて暮らすようになってから、彼より手紙が届いたのはこれが初めてである。彼女は毎月のように手紙を書いていたのに、今まで一度も返事はこなかった。
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