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パニック。
外で活動している人たちは己に執着しているので、身の回りや世界で起こったことに一喜一憂して、思い通りにならなければパニックに陥るのでございますですよ。
私のように引きこもりニートおよび子ども部屋おじさん歴三十有余年、チビデブハゲ真性童貞と「負のロックフェラー財団」と呼ばれている身からすれば、もはや失う物のないある意味「無敵の人」でございます。
今も尾を引いている新型コロナのパンデミックも、日本各地で頻発する大地震も、ウクライナやイスラエルで起こっている戦争も、この海底に沈んだ石でできた船のような生活をしている私からすれば、何ら関係のない出来事に過ぎません。
もうぶっちゃけ五十年も生きたので、何かのきっかけで死んでも悔いはありませんですしね。
「守るものがない」というのは本当に最強なのでございますね。
よくパニックホラーとかで、ゾンビや殺人鬼なんかが襲ってきたとしても、どうせ車の免許もなく、肥満で走れない私などは真っ先に殺されるに相場はきまっておりますですよ。
もう、私がなんとかなるとすれば、ワンチャン死んで、輪廻転生するしかないと思っておりますので。
ほら、孤独死とかが怖い、なんて想像してパニックになってる人も多いと聞きますが、あれなんて、どんだけ家族や親類が死に水を取ってくれるといったって、死ぬときは一人でしょう?
誰かあの世に連れてくわけにもいかないじゃないですか。
それに死ぬ時は脳から快楽物質が出て、苦痛がウソのようになくなって、お花畑とか三途の川とか先に亡くなった家族親戚が迎えに来てくれる幻影を見ることができる、という研究もあるわけですから。
つまるところ、死がパニックの元兇なのではないか、と私はにらんでいるんですよね。
私がパニックに陥るようなことがあれば、必ず死んでしまいますし、死ぬことをどうとも思っていないので、私はパニックにならないと。こういう論法でございますですよ。
会社に遅れそうだったり、仕事で失敗して上司に怒られる。
恋人にフラれそうになって、あるいはフラれて不安になる。
どれもこれも、みんな自分というものに期待しすぎなのですよ。
私など、仕事もなく恋人もいたことがありませんので、心がかき乱されるようなことはございません。
他人にどう思われてもいいとおもっているので、どのような醜態をさらしても、一向落ち込んだりパニックになる必要がないのですね。
開き直ってからが、人生の謳歌じゃないでしょうかね。
人生の勝ち負けなんて、結局他人に「俺はこんなにすごいんだぞ」とか、「俺なんてこんな惨めで」と思われてるんじゃないかっていう脳内妄想ですから。
人生は勝ち負けみたいな曖昧なもんじゃなくて、自分が楽しむためにあるのでございますですよ。
そもそもですね……グルグルグルグル。
あ、あれ?なんかお腹の調子が変になってきましたですよ。
グルグルグルグル……。
そ、そういえばさっきジャンボ激辛やきそばと暴君ハ○ネロ、2ℓのコーラ一気飲みをしてしまったので、お腹を下してしまったようでございますですね。
まったく、自分の強靱な胃袋を信用しすぎるのも困りものですね!
こんなとき、私の子ども部屋のとなりに二階のトイレがないことを恨みますよ。
まあ築六十年のボロ屋でも、タダで住めるだけありがたいんですけどね。
……よっこらしょ!そういっている間にもだんだんお腹の方が、予断を許されなくなってまいりましたね。
下のトイレに向かいましょう。
さあ着いた。
あれ?……あれあれあれ?誰か入ってますですよ!
ちょっと、ガチャガチャガチャ!トイレ代わってもらえませんですかねぇ!
「エヘン、エヘン!」
あっ、トイレに入っているのは父でございますですよ!父が一旦トイレに入ったら、もちこんだ新聞を隅から隅まで読み終えないと出てきません。
ちょっと、今危険なんですよ!ドンドンドン。一瞬だけ私と代わってもらえませんかねぇ?
「エヘン、エヘン!」
やっぱりダメだあ!父の頑固さは、テコでも新聞読み終えるまでトイレを譲る気はありませんですねえ……。
もう、外に出てトイレを借りるしかありませんですよ!
コ、コココ、コンビニと公園、どっちが近かったでしょうかね?
ギリでコンビニ?でもまた先客がいるかもしれませんし、公園ならめったにトイレに入る人はいない!
公園に向かいますよ!
ダメだ、もうビッグウェーブ到来で危険水域突入でございます!
靴を履いて……ああもう、お腹の贅肉がジャマで靴に手がとどかないじゃないですか!
もうちょっと、えいえい、えいっ……。
あああぁーっ‼
……。
はい……もう慌てる必要はなくなりましたですね……。
ちょうどビッグウェーブ到来時に、パニクって靴を履こうとお腹を圧迫したのが、この有様でございますよ。
玄関が地獄絵図になってしまいました……。
とりあえず。
私に失う物がなくて、本当によかったです。
パニックになっても、ノーダメージの私は無敵だといえるでしょうね。
みなさんも、暴飲暴食にはくれぐれもお気をつけください。
人間の尊厳を失くす事態は、日常にあふれているのでございますですよ……。
終
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