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静かな馬の前で(4)
わかりあえた男女は抱きしめあったままだった。
馬は優しい瞳で両者を見守っている。
ローちゃん「……なぁ、今じゃなきゃいけなかったのか? 俺はこれからな……ふふっ、ぁ雨の中、危険と言われてるクロブラーム領に行かなきゃならねーんだぞ? それが俺のに、任務なんだから……ふっふふふふ……」
マリア「それはそーだろうけど、今いわなきゃ、もう話せないかもしれないって……思って、焦っちゃったの。騒いで、我が儘いって、ごめんねごめんね……」
ローちゃん「いいや……嬉しいんだよ……俺……ふ、ふふっ、ふふふふ……なんで笑っちまうんだ……ふふふふ、ふふ、ははははははは……」
マリア「……うふふ、ふふふふ……ふふっ、なんでだろーね……? ふふふっ笑ったね、ローちゃん……あたしの目、見てくれて……好き……」
ローちゃん「うん……お前の目を見たらさ、俺……彼氏と別れてくれ、お前が好きで好きでしょうがねーんだって……勝手なこと言いそうになる気がしたからさ……はぁ、それでなんだよ……」
マリア「ウソついてたのは、許して……」
ローちゃん「いーんだよ。俺も誤解してた。……ふっ、ははははは……ちっとは考えろって、マリア……ふふ、ははははは〜〜ははは……ああ〜〜出発の時刻をとっくに過ぎちまってる……お前、泣きわめくから……放っておけないだろ……ふっふふふふふ……」
マリア「それも、ごめ〜〜ん……うふふふふふふふふ……ねえ、誰かと待ち合わせしてるの? 他にも行く人がいるの?」
ローちゃん「いいや、そんなのいねぇって。単独任務なんだ。……まぁ、そうだな〜俺が行ったとしても……ハンフシュテングルやロブジョワやエーファちゃんが確実に見つかるわけじゃねぇし……」
マリア「三人とも、元気ならそれでいいけど……ねぇ?」
ローちゃん「うん。それだよ。……剣技つかえる騎士って認められて、任務にも選ばれたけどさ、そんなことよりも俺……お前が好きなんだなぁ。……護衛任務を続けてるあの三人、アマンも入れると四人は……相当に優秀だし……俺が一人で屋敷に行っても、あまり状況は変わらねぇだろ〜」
マリア「ファニーもローズもアンもエーファも、みんなそれぞれ……得意とするものは違うけど、あたしよりもずっと強いよ。魔法も少しは使えるし。……あ、そうだ……ローちゃん、耳かして……」
ローちゃん「ん……耳……?」
「…………」
マリアは彼の耳にだけ聞こえるように何かを喋った。
「!!!?? ……ぃや、や……なに、い、いきなり……言ってんだよ?? そ、そこまで、あの、ぃぃ言わなくてもいいって……」
マリアの正直な言葉に彼は困っている。
「……本当にそうなんだもん。もうウソつかないもん。……ローちゃんは違うの?」
「……お……お、それは、俺も同じだよ……お前には……隠し事しない……」
赤面した彼がぼそっと返すと、マリアはにっこりして再び抱きついた。
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