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人生の休暇中だ。
僕はあの日会社に行くつもりだった。
いつもみたいにバックを持ってバス停に行く予定が、バックを持ったまま足がバス停とは逆に動いていった。しばらく歩くと、空気が割れていて当たり前のように僕は割れ目に入った。
割れ目の中は、快適でふわふわの絨毯と森とそよ風、ソファーもある。
僕はぼんやりとソファーにすわり、風を感じた。
着ていたスーツも脱ぎ、いつの間にやら用意されていたパジャマに着替えただ上を見ていた。
そして今まで何もやらずに1週間。
ようやくやる気が湧いた僕はスーツに着替えて辞表を出し会社を辞めた。
僕はまたふわふわの上にいる。
いつまでのびるかわからない人生の休暇。
楽しくも、辛くもない。無駄な時間。
ある日無駄な時間を過ごしている僕の前に、美しい女性が現れた。歩くたびにキラキラの粉が舞う。
「ゆっくり休めましたか?」
「はい。とても。こんなにゆっくりしたのはいつぶりかわかりません。」
「そうでしたか。あなたはとてもいそがしかったのですね。」
「はい。ずっと走っていた気がします。」
「そろそろ階段を登るときがきました。準備はできましたか?」
「はい、大丈夫です。」
「それではまいりましょう。」
僕は女性と歩き出した。
歩き出しながら僕がどうして人生の休暇をとっていたか思い出した。あの日バス停に向かう途中に、僕は強い光を浴びて倒れた。そして、そのまましばらく道路で倒れていたのだ。発見されたときには僕は死んでいた。過労死だった。
僕は傷ついていた。体も心も。
だから天国に行く前に休んでいたのだ。
でももう長い休暇はおしまい。
大きく高くのびている階段を登ってゆく。
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