7才

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7才

「のびろ、のびろ、びびびびびー」 「のびろ、のびろ、びびびびびー」  家が隣で、お互いの母は同じ歳の幼馴染みでともに婿養子をもらった間柄。それゆえに二人の母は親友でありライバルでもあった。そして僕たちは一人っ子だったからまるで姉弟のような関係だった。  相葉瑠花7才、隣に住む少女は早熟で背も高く読書好きで頭も良い。勝ち気でいつも僕と勝負をしたがっていた。髪は少し長髪だがいつも後ろで括っている。見慣れてはいるが時々ドキッとする美少女でもあり、今は同級生だがクラスメートの男子から僕が嫉妬されるほどモテる女の子でもあった。  僕は沼田大地7才、髪は母がいつも適当に切っているけれど手でグシャグシャってしたら大丈夫で僕の髪はクセ毛だからふんわりとまとまる。まぁ、あとは普通で凡人。というか目立つのが苦手で臆病。だから瑠花みたいな勝ち気な子にあこがれる気持ちもある。  ある日、瑠花のお母さんが球根を2つ、花が好きな友達から貰ってきたと言って帰ってきた。ちょうど僕と僕のお母さんが回覧板を持って届けにきた所で出くわした。 「ちょうど2つあるから瑠花と大地で育ててみたら?」   瑠花のお母さんがそう言った。 「うん」とは言ったものの僕は花には本当はまったく興味はなかったんだけど、 「やろやろ!ねぇ二人で育ててどっちが早く花を咲かせられるか、競争しようよ!」  瑠花がはしゃいでそう言って、急いで家の裏手の奥から植木鉢を2つ持ってきた。  僕に拒否権はなくて、いつしか瑠花とはそんな関係になっていたから、この日もそのあと一緒に球根を鉢に植えた。  球根の名はダリア。  花言葉は優雅や気品や華麗や威厳だが「裏切り」の意味もある。  最初は嫌々だったけど、二週間もしないうちに僕の方の球根が先に芽を出して、2日遅れて瑠花の球根も芽を出した。瑠花の悔しそうな顔が僕は少し嬉しくて、すくすく伸びてく成長を見てると楽しくなった。  ふたりで歌をよく歌った。 「のびろ、のびろ、びびびびびー」  そう言って両手を下から引っ張って空高く持ち上げるように伸ばすのだ。茎が伸びることを念じて魔法をかけるように。 「のびろ、のびろ、びびびびびー」  僕が瑠花のために作った初めての歌だった。  だけど途中から瑠花の鉢のダリアの成長は早かった。あっという間に追い抜かれて花が咲いた。  当然、瑠花は勝ち誇っていた。  でも学校の担任の先生に後から聞いた話だけど、瑠花はどうしたら早く成長して花を咲かせられるのか図書室でいっぱい調べていたらしい。僕にはそういう努力が足りないからダメなんだと叱られたことがあった。
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