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そんな最低な忘年会だったわけだが、汐見と話しをしながら会社に戻り、着替えを待ってる間。
ふと、この偶然の出会いが俺に何かをもたらしてくれるような気がしたのも確かだった。
社に戻ってロッカーから手早く着替えを取り出した汐見は
『佐藤さん、移動するのもなんなので、僕、ここで着替えます』
更衣室まで行くのも面倒だし、と言った。
『あ、大丈夫ですよ。僕、むこう向いてますね』
『先に帰ったらいいのに……』
『あ、それは気にしないでください』
『でも……今年最後の仕事日なんだから……』
『そんなこと、気にしないでくださいって。汐見さんの方がよっぽど……』
そう言って、俺は着替え始めた汐見の方を見ないように視線を逸らす目的で、窓ガラスの方を向いた。
すると、そこには暗い屋外を映す全面窓ガラスが室内を鏡のように映し出していて───
(なっ!し、汐見さん……?!)
汐見潮26歳が着替える、後ろ姿が写っていた。
確かに会社に向かう道中、どうやら下半身まで濡れていると言っていたし、下着一式も着替えとして置いてあると言っていた。ので。
トランクスを履き替えるために、その……
惜しげなく脱いだその尻が……丸見えだった……んだ!
男の尻なんて、なんてことはない、と思うだろう? 通常なら。
だが、その時そこに写った汐見の後ろ姿は、異常なくらい艶かしかったのだ。
(ちょ、お、俺、だいぶ酔ってる?)
普通なら、後ろ姿とはいえ、同性の裸体を見る機会なんてないし、そんなモノに欲情するはずがないんだ。
だから、油断していたのだ。
(おれ、は……そっちの人間じゃない……けど……)
鏡のように窓ガラスに写った汐見の裸体、その体でも──臀部──いわゆる尻だ。
それが……あまりに、ありえないほど生々しく……
時折腕まくりすると見えている浅黒い腕や首元とは全く異なって
(し、白い……)
むっちりとした、それでいて形よく、ふくよかな白い臀部だったのだ。
ウエスト直下から盛り上がっていて大きく丸い。
いわゆる西洋人のような、よく切れ上がった肉付きの良い【美尻】──
俺は決して尻フェチではない。女性だってパーツなら大きな胸に惹かれる。
だから尻にさして興味がなかったはずなのだ、なのに……
汐見が気づいていないのをこれ幸いと、鏡面になったガラス越しに汐見の尻をじっくり観察してしまっていた。
(……くぼみが少ないんだな……珍しい……)
鍛えた大臀筋は、男性だと若干凹む。
その凹みが少なく膨らんでいるせいなのか、全体として丸っとしていてそこだけ見るとちょっと鍛えられた女性の臀部に見えないこともない。
こう、白くて丸くてむっちりしていて……
(柔らかそう……触ってみたい……)
本当にそう思わせるような魔性の尻に見えたのだ。酔ってるとはいえ。
(いや、こう……掴まえて揉みしだきたい……)
男なら、ちょっとは思うだろう?
Bカップくらいはありそうな太った同級生のおっぱいを女子のそれに見立ててついつい揉んでしまいたくなる、そういう気持ちが。
その時は酔ってたのも手伝って、そう思ったんだと……
(どさくさに紛れて触ったりできないかな……)
ついさっきまでまともに話したこともない同性の尻にこんなに興味が湧くなんて初めてのことだった。
そして、その美尻の原因はすぐに知れた。
『オレ、野球少年だったから尻が人よりちょっと大きいのが悩みでさ』
恥ずかしそうに本人が述懐した。
普通サイズのボトムを買うと、腹は出てないからウエストはぴったりなのに尻が入らない。だから、スタイルをよく見せるためのスキニーなズボンは買わないと決めているらしい。
汐見とまともに話をしたのはこの忘年会の時が初めてだったが、社内ですれ違ったりすることは幾度かあった。
その度に、有能と聞いている汐見が、いつもタックが2つも3つも入ってるチノパンみたいなだっさいボトムを履いているのが逆に目立っていて少し気になっていた。
開発部は特殊な出勤形態であることも手伝ってビジカジをあまり外さない限り、女にモテそうな今時の格好をしている人間が多い。だが、汐見に限ってはそういうスタイリッシュな格好をしているのを見たことがなかった。
その理由はこれだったのか、と思い至り、そしてその美尻にムラついてる自分に驚いたのも確かだった。
(もしや……俺って男もイケるのか?)
それはこの時には判別できなかったが、とりあえず酔ってるから変なこと考えるんだろうと結論づけ、汐見が着替え終わるのを待って
『よかったら一緒に飲み直しませんか?』
邪な気持ちを心の中から追い払い、気軽な気持ちで汐見をサシ飲みの二次会に誘った。
『え? 本気で言ってる?』
『え? 本気ですけど……だって、仕切り直したくないです? 酒もぶっかけられたし……』
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