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「おはよう」
俺はクラスの友達に挨拶をして席に着く。
俺が自分の席に座ると、俺の耳には、目の前の方で話している女子生徒の雑談が入り込んでくる。
「今日、電車込んでたよね」
「そうそう、込んでた。なんでだろうね」
「ところで、英語の宿題やって来た?」
「うん、もちろん!」
「和訳難しかったよね」
「わかる~」
……ん? 君たちは何を話しているのかな?
なんか、英語がどうとか聞こえた気が…………あ゙っ、しまった。そう謂えば、プリントの和訳をしてこいとか、そんな事を先生が話していたよな。
和訳アプリにぶっこめば……って、意外と制度低いからダメか。
……まずいぞ、英語は一時間目だ。
誰か、宿題を見せてくれそうな人は…………って。はぁ、あいつしか居ないか。
俺は肩を落としながら、クラスの角に座っている、幼馴染みの横山ヱルの元へと上履きを進める。
「……よぉ、ヱル。おはよう」
「…………なに、気持ち悪いわね。一緒に登校してきたじゃないの。今更お早うも、何も無いでしょう」
ちっ、流石は幼馴染み。感が鋭い!
「……いゃ……大した事じゃないんだけと、ヱルって、英語の宿題とか、やって来たりしている?」
「そりゃまぁ、って、あんたまさか忘れたの?」
俺がテヘヘと情けない顔をすると、ヱルは大きなため息をついた。
「……で、私に何の用かしら?」
くっ……、女ってやつは俺の要件を知っていながら、敢えて聞きやがる。
サドか!
まったく、何かにおいて序列を付けたがるのが女の嫌なところだ。
「何その顔? 何か云いたげねぇ?」
ヤバい、心が読まれた。
「いゃぁですね、ヱルさんが、喉乾いていないかなぁと思いまして。でしたら、是非小生に買わせて頂きたく。そこで、もし、もし、宜しければ宿題など見せて頂ければなぁ~って思いまして」
「…………随分気持ちの悪い喋り方するわね。それにセリフ長いし、日本語おかしい……」
くっ、いやみったらしい。
「まっ、いいわ。ほら」
そう言うと、ヱルは机の引き出しの中から一冊のノートを取り出した。
「ありがとう」
俺は手を出し、そのノートに触れようとした瞬間、ノートは俺の手をするりとすり抜けた。
そして、ヱルの胸元へと移動し、両手でしっかりとガードされてしまうのだ。
「そういえばさ閃貴、私、最近できたモコモコ・カフェのパフェが食べたいのよね」
くっ、ジュース如きでは貸さないと云うのだな。
しかし、ここは背に腹は代えられない。
「ゎ、わかったょ。パフェ奢ればいいんだな」
「さっすがは閃貴! 分かってるじゃない!」
しかし、ここで思わぬ伏兵が現れた。
「な~に、な~に、モコモコ・カフェのパフェの話? 私も入れてよ」
そう、うちのクラスでトップクラスの美貌を持ち合わせた正木聚楽だ。
ヱルとは同じテニス部なので、二人は良くつるんでいるようだ。
「もしかして、二人でデートのお話だったりした? 私お邪魔だったかしら?」
「ジュ~ラァ~、そんな訳ないでしょ。こいつとは、家が隣ってだけよ」
「その通り。俺がこんなちんちく娘とデートなんてあり得ないでしょう。それより、正木さんも一緒に行きません?」
「そうね~、確か今日は部活なかったしね。いいわよ、私もパフェ食べてみたかったし」
俺は二人に見えない様にガッツポーズを決めた。
「あらぁ~、閃貴。さっき私と行くって時より、顔色が良いんじゃないの?」
「んなわけ、あるか。さっ、宿題、宿題!」
俺は、不穏な空気へと流れが変わったのを察知して、その場を去る事とした。
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